映画「おくりびと」レビュー

アタシの仕事は「葬儀屋さん」で納棺師と一番近いとこにいると思う。この映画も自分が今の職業だからより「見たい」という気持ちがありました。

アタシは友達になかなか自分の職業を言えないでいるし、言えてる友達もいるけど言えてない友達もいます。言える言えないんじゃなく、取っ付きやすい仕事じゃないし、嫌とかそーゆんじゃなくてそれだけ人が死ぬというのは日常の中の非日常なのだと思うと、なんかめんどくさかったのです。代名詞のような映画です。もっくんっが感じたココロの葛藤がアタシにもありました。広末涼子が「汚らわしい」と言う気持ちも片隅にあったと思います。まさかこんな形で、しかも自分が大好きな「映画」という媒体で自分の職業がモチーフになるなんて、面白いですし感激しました。

人は誰しもおくりびと。心優しいおくりびと

人の日常の中にひっそりと潜んでいる「死」というものに毎日向き合っていると毎回思うのは「生きるということ」です。人間は他人の死を持って自分が生きている毎日を見つめ、その日々に感謝し、命のあることの尊さときらめきに感謝するのです。残念なことにそのきらめきを見出せないまま命を自ら絶つ人もいます。

この映画でも死後2週間のお年寄りの孤独死や、若者の自殺や事故、独特な「死」が取り上げられていたように思います。こういう死は今は日常で、死に方の一つとしてあります。
この映画がどうして外国でウケたのかがわからないけどやはり神秘的であるからだろうと思います。「死」というのは万国共通です。死に対する想いや、悲しみは万人がおぼえる感情です。死体を慈しむ行為…それは日本だけなのかな?外国はこういうこと、しないのかな?
死体を清式し、お別れをしていただくと一気に感情があふれてくるようで、つられて泣きそうになります。

この映画の音楽もすごくよかった。物悲しげで暖かいかんじ。ちぇろという太い音にも安定した揺らめきをかんじました。心の平穏を願う鎮魂歌のようにも聞こえました。映画の中の吹雪や炎から温度も感じました。ぬれた髪の毛、暖かいお酒。野暮ったい手編みのセーター。すべてがぶくぶくしたあぶくみたいにあふれて止まりません。

本当にいい映画でした。ストーリーに大きな盛り上がりは無いけれど、自分たちがいずれどこかで通るであろう人生の通り道を垣間みたような映画でした。映画館でも自宅で見ても、何度見てもその都度優しく何かを教えてくれるような気もします。
生きていれば誰かを抱きしめたくなる時もある、ののしりたくなる時もある。繋がる糸がもどかしいぐらいに解れていても、たぐり寄せたい時とたぐり寄せなきゃいけない時がある。

どんなに悲しくても大切な人が逝くときアタシは寄り添おうと思います。悲しみを乗り越えることは生きているものの使命です。いつかどんな声で話していたのかも忘れてしまう時が来るかもしれません。でも必ず別れた時のことを思い出すでしょう。そしたらきっと微笑んで歩けると思うのです。

今まで見た映画の中で一番だと思えるくらい、ここ最近にはないくらいの感情を頂きました。

この映画に出会えてよかったです。

「おくりびと」オリジナルサウンドトラック

「おくりびと」オリジナルサウンドトラック